在り日しへの後悔。
この景色、この透き通った空気には懐かしさを感じる。
秋の実りを待ち望んでいる青い稲穂の生い茂る田畑、外界とこの場所を分断するかのように縦横に幅広く聳え立つ山々、日本特有の屋根瓦を備えた趣深く古びた家が点々と散在し、人っ子一人も見当たらない。
人を見下ろす高層ビル、排気ガスを撒き散らし空気を汚す車、歩きやすいよう舗装された道、そんなものは一切なく、必要ともされないそんな田舎町。この場所にいるだけで、心が安らかに静まる。
故郷とはここまでにも安堵を覚える場所だったのか。落ち着きの無い都会での生活で随分疲弊しているのだと、改めて実感させられる。
あの出来事さえなければこうは思わなかっただろう。
上司が昔からの取引先との案件で不手際をやらかし、剰え当人は責任を取らず、僕に何もかもを押し付けられ、大目玉を食らった。やっと自身の受け持っていた仕事が軌道に乗り始めていたというのに、そこからは転落の一途を辿るのみだった。上司のお陰でこっちは減給処分に加え、社内の人間からは白い目で見られるようになった。中には同情してくれる者もいた。とんだ災難だったな、運が悪かったな。